研究テーマが思いつかない
人生において悩むことは沢山ある。そのうちの一つに研究テーマが挙げられると思う。かく言う私も学生時代は研究テーマを考えるのに1ヶ月以上悩んで、結局指導教官からテーマをもらって研究をしていた。
外部で研究活動をしたり、大学や企業で研究に取り組んでいるうちになんとなく、失敗する研究テーマとうまくいく研究テーマというものが見えてきたので、それをまとめたいと思う。
失敗する研究テーマの探し方
色々な学生を見てきたが、大抵うまくいかない、もしくは途方もなく時間がかかる研究テーマの探し方は
- 「単なるインテグレーション」で先がない
- これまでやられていないものを必死に探す
- 「〜の分野がやりたい」という単なるやりたいだけで研究ではない
というのが挙げられる。インテグレーションしたところでただの寄せ集めでしかない。「既存の手法のAとBを合わせてみました」としても別に新規性はない。
また、自分で探そうとしても良いことはない。ほぼ全ての場合で他の人が既にやっている。もし探して出てこなくても「そもそもやる価値がないことがわかっている」という場合もある。
学生にありがちなのが「機械学習や深層学習をやってみたい」という手のものだ。ベンチャーにインターンシップに行った方が得るものは多いと思う。学部生の場合は「思っていたのと違う」と言って大学院で研究室を変えるパターンが多い。
この手のパターンにハマってどうしようもなくなっている場合は素直に指導教官と話して今後の方針を話し合った方がいい。
うまくいく研究テーマの探し方
一方で、結構な割合でうまくいくやり方は、研究テーマのきっかけが「疑問から生まれるかどうか」ということだ。
どういう意味かというと論文や文献や書物を読み漁って「これが正しいならあの説や手法はどうなるんだろう」という何かの知見に基づいて生まれるような疑問から出発する研究は大体うまくいく。
具体的に言うと、
「論文を読む」
↓
「他の同じような引用数の多い論文と比較してみる」
↓
「競合している(コンフリクトしている)部分を探す」
↓
「その理由を考えてみる」
というのを何回か繰り返してみると良いアイデアを思いつくことが多い。
別にそのアイデアが最良の方法でなくても問題はない。研究とは常に何かを発展させることだ。発展させた結果が良かろうが悪かろうが問題ない。「そういう手法もある」で終わる。良い結果だけを期待していたら何もできないし、やってみなければわからないことは多くある。
とりあえず手を動かして、ダメそうだなと思ったら次のものを探す。それを繰り返して行くとあるときに、今まで考えていたものがまとまってハッとひらめくことがある。机の上で唸っていても別に閃かない。とにかく手を動かすべきだ。
疑問から出発する考え方
小林秀雄と岡潔の「人間の建設」を読んだときにこんな言葉があった。
たとえば、命という大問題を上手に解こうとしてはならない。命のほうから答えてくれるように、 命にうまく質問せよという意味なのです。
岡潔; 小林秀雄. 人間の建設 (Kindle の位置No.762-763). . Kindle 版.
私はこの言葉を見たときに脳天から全身を貫くように電流が走った。これが研究の全てなのではないかと。
この世に存在する何がしかの仕組みをなんとか理解したり、利用したりする営みが研究だ。人間ができるのは、ただうまく聞くだけなのだと。どのようにしてうまく聞くのか、うまく問うのか。それこそが研究の本質なのではないかと私は思っている。
問題をなんとかこさえるのではない。上手な疑問を持ち、それを問うのだ。それが研究だと思う。
研究がうまくいかなくて行き詰まることがあったら。少しだけ休んで、そこらへんを散歩して「どのようにしたらうまく問えるのか」考えてみるといいかもしれない